パソコン何でもQ&A

016 「一太郎」ショック
【1】 朝日新聞が一面トップで、「一太郎」に販売禁止命令
 最近、パソコンを習うようになった人には、「なぜこれが、朝日の一面のトップ記事になるんだ」と思う
ことでしょう。しかし、今から20年ほど前からパソコンを習った人には、ショックだったでしょう。現に、朝
日の記者やデスクが、この記事を破格の扱いにしているんですから…。
 私も、1986年にワープロ(東芝ルポ)を購入し、当時1枚が数千円という時代のFD(フロッピーディ
スク)100枚以上に、膨大な史料を入力・保存したものです。当然、このお金とエネルギーをルポに注
入したので、ワープロの限界を感じつつ、ルポと心中する覚悟でした。
 私にとって、1989年は歴史的な年です。ワープロで保存していた膨大なデータが、コンバートすれ
ば、国民的ワープロである一太郎上で甦るというのです。早速、国民的パソコンであるPC98を購入し
ました。一太郎はジャストシステム社、PC98はNECが販売しています。
 1998年頃、ウィンドウズ(OS)を販売するマイクロソフト社が、同社のワードをパソコンに内梱させる
販売方法で、急激な成長を遂げるようになりました。それでも、私を含む多くの一太郎愛好家は、長い
間、ワードと一太郎の辞書機能ATOKを組み合わせて使用していました。
 まさに、私にとって、1989年から2000年頃までは、一太郎と共にあったといっても過言ではありませ
ん。朝日の一面記事にはそんな、思いを感じます。
【2】 何が問題なのか
 朝日新聞の記事を見ると、「パソコンに表示するソフト画面上で『ヘルブモード』ボタンと呼ばれるマ
ークを押した後、別の機能ボタンを押すと、その説明が表示される仕組み。この特許については、ジャ
ストシステムの家計簿ソフトでも訴訟になった。」
 「だが04年8月、今回と同じ東京地裁の裁判長が、特許侵害はないとする全く逆の判断をしている。
判断を分けたのは『ヘルプモード』ボタンの絵柄。一太郎は『?』とマウスの両方が描かれているが、
家計簿ソフトは『?』だけ。マウスの絵もある一太郎の方は、松下が特許を出願した際の説明にある
『アイコン(絵文字)』とみなされた。微妙な判断だつた。」
 特許権に関してソフトウェア製品の製造・販売の中止が命じられるのは異例のことです。
 松下電器によると、「操作方法のヘルプ機能に関する表示技術」で、1998年に特許を取得してい
ました。
【3】 控訴すれば、販売に影響なし
 東京地裁は、「松下側が求めた、判決の効力をすぐに及ぼす仮執行宣言を『相当でない』として付け
なかった。ジャストシステム側は控訴する方針」
【4】 著作権とパソコン
 神戸新聞の社説は、「松下の特許は98年に登録されたが、今になって問題化してきた背景には、
大手メーカーが近年、保有する膨大な特許の価値を見直し、収益につなげようとする姿勢を強めて
いることがある。」と主張する。
 ついで、「特許保護が新たな開発の障害となっては角を矯めて牛を殺すことにもなる。そうした恐れ
も視野に入れながら、社会の合意を作り上げる必要があるのではないか。」と説く。
 私も、著作権を否定するものではないが、今回のことから分かるように、大企業が法的に有力なスタ
ッフを抱え、訴訟に持ち込むと、中小企業や個人はとうてい太刀打ちできなくなります。
 パソコンの歴史は、ラフコン(大まかな合意)を基本に発展してきただけに、危険な匂いがします。
【5】 庶民の立場で考えると…
 私のパソコン歴と「一太郎」は深い関係にあります。
 また、ジャストシステム社の創業者は、兵庫県にあった県立姫路工業大学の卒業生です。四国の徳
島に帰り、起業したというだけでも、感動です。
 また、数少ない国産ソフトというのが、魅力です。 
 しかし、ウインドウズ98以降の「一太郎」は使っていません。「Atok7」を愛用していました。一時、「一
太郎ライト版」も使っていました。今は発売されていません。その結果、私は、軽い軽い、「メモ帳」(ウイ
ンドウズの付録ソフト)を使うようになりました。
 私は、メディアドライブ社のOCRを使っています。バージョンアップする度に、無償でバージョンアッ
プ版を更新してくれました。本来、バージョンアップする目的は、完成途上のソフトの完成にあります。
 ほぼ完成されたソフトを、金儲けの手段として、不必要な「おまけ」をつけて、バージョンアップと称し
て販売する手法では、いずれ庶民から見放されます。
 初心に帰って、基礎基本的なソフトと、より高度なソフトを発売されることを祈念します。