情報格差(Digital Divide)

デジタルデバイド(早稲田大学理工学部・木村忠正教授)
2005年10月22日(朝日新聞)
 「総務省はuーJAPAN政策に基づき、現在ブロードバンド接続できない地域(約345万世帯)を、2010年までに解消する目標を立てた。重要な政策だが、真の問題はその先にある。<BR>
 ITは社会に広範な影響を与える技術革新だ。そこで、短期的な利益追求ではなく、中長期的視点にたち、社会レベルでも一個々の市民レベルでも、ITを使いこなす力を育成し、高度利用を発展させる必要がある。
 だが、日本社会の現状は、ITに関する機会不平等(デジタルデバイド)が厳然と存在し、社会の階層化が深刻化するおそれがある。03年12月の調査では、パソコンによるインターネツト利用者は、中卒約15%、高卒約35%、大卒約70%、大学院卒100%と、学歴と強い相関関係がある。知識・情報集約型産業こそ、人口減少社会において、縮小しつつ成長するという歴史的課題への一つの解答だ。しかし、こうしたデジタルデバイドの現状は、「デジタル経済」の恩恵を社会的に偏在させ、機会自体すら奪われる人々を生み出してしまう危険性がある。実際、こうしたデジタルデバイドの拡大は、市場競争原理を優先するアメリカ社会で顕著にみられる。
 他方、フィンランドなどの北欧では、小中学校からの情報教育に力を注ぎ、階層と関係なく情報・知識社会への適応力を育んできた。グローバル化や市場競争の重要性を同じように認めても、アメリカが社会的変化のリスクを個人レベルで解決しようとしているのに対し、北欧諸国は社会全体でリスクを共有し、分散させようとしている。
 高度なITをどう生かすかを考えるには、どのような社会を築くかというグランドデザインが不可欠だ。アメリカ型階層社会を目指すのか、逆に北欧型を目指すのか。「デジタルデバイド」という概念を一つの手掛かりとして、そうした社会的議論を深める必要があるのではないか」

Wikipedia情報格差
 情報格差(じょうほうかくさ)とは、対象間における情報量に差があること。また、その差によって「情報強者」と「情報弱者」("情弱"と略されることがある)の間に生じる格差のことを指す。
 「情報格差」の英訳は「Digital Divide」となっている。

国際的な情報格差
 世界的には、2000年前後から議題になっている[2]。議題になった2000年は、世界の総人口に占める割合が5.1%の米国、カナダが、世界のインターネット人口の49.4%を占める状況となっていた[2]。
また、経済力や通信技術の面で、発展途上国は先進国に比べてどうしても不利な立場に立たされやすい。マサチューセッツ工科大学のプロジェクトチームが推進しているThe Children's Machineは、このような情報格差の解消を目的としている。
情報格差が経済的格差を拡大する要因とならぬよう、各国政府は対策に追われている。アメリカでは、白人と黒人の情報格差の広がりが問題になっていたが、例えば電話がそうであるように、ある程度以上普及すれば格差が減少していくという事を根拠に政府がインフラ整備と情報技術の普及に予算をつぎ込んだ。
日本の概説
 日本においては、1990年代以降、インターネットなどのコンピュータネットワーク(情報技術)が普及するにつれて、パソコンなどの情報機器の操作に習熟していないことや、情報機器そのものを持っていないことは、社会的に大きな不利として働くようになった。

 情報格差で下位に位置づけられる対象としては
情報機器の購入・維持や教育を受けるための費用が出せない者
中高年など、長い間情報機器がない環境で過ごしてきたため、情報機器に対する拒絶反応(コンピュータアレルギー)により情報機器を利用しない者
放送(地上波・地上デジタル)・通信(ブロードバンド)の採算性が人口等の条件により悪く、サービスが提供されていない地域の在住者
などが挙げられる。

政府の対応
学校関係
学校教育における情報教育カリキュラムの充実
学校への情報機器の整備
講習会の受講料金の補助
インフラ整備について
自治体と共同で全県的なブロードバンド通信基盤の整備
通信事業者への補助
 ブロードバンドが普及するにつれ、ブロードバンドと地上デジタルテレビジョン放送(地デジ)を利用できる地区と利用できない地区(特に町・村・離島)との情報アクセスへの格差が生じている。

情報手段の格差
コンピュータのハードウェアおよびソフトウェアを、容易に入手出来るかどうか。経済、流通などの側面。
コンピュータやそのネットワーク(インターネット)を、人が容易に利用し、使いこなす事が出来るかどうか、また希望する人が技術・知識を家族に頼らず自ら身に着けようとするか。人的側面。情報リテラシーなど。

通信手段の格差
インターネットや携帯電話・PHS、無線LAN等の移動体通信を始めとする情報ネットワークを、容易に利用出来るかどうか。接続費用の経済面、サービスエリア、速度など。

情報資源の格差
放送格差
地上波、衛星波などによる放送サービスを容易に受ける事が出来るかどうか。国、地方特に市・町・村および離島別に見るそれぞれの格差。
マスメディアの格差
民間で作る新聞・書籍・雑誌、レコード・コンパクトディスク、映画(映画館)などを、容易に入手・利用出来るかどうか(特に地方における発売日の遅延に対する問題)。また、図書館サービスの利用容易性。