進歩とは、課題を見つけ、課題を克服することにあり(03)
ワープロの前時代の魅力と課題
(1)デジタル機器との最初の出会い
 私が初めてデジタル機器と出会ったのは、今から23年前の1985年のことでした。
 今も付き合っている友人が子どもの「おもちゃ」として買ったものでした。それを、その子供と取り合いしながら、使わせてもらいました。メーカーはナショナルで、名前を「パナワード」と言ったと思います。
(2)魅力
 JIS規格のキーボード上でローマ字入力すると、見ている前で日本語(もちろん漢字に)変換されます。それがとても不思議でした。その上、間違えれば、その場で訂正ができるし、追加もできます。何度も推敲が出来るのが魅力で、その時の心のふるえを今も覚えています。
 小学生の子どもとその「おもちゃ」の取り合いをしている自分を発見して、恥ずかしい思いをしたものでした。その女の子も大学を卒業し、就職し、職場結婚をしました。時の流れを感じます。
 このデジタルの「おもちゃ」は大人を虜にする魅力を持っていました。デジタル時代の到来を予感する出来事でした。
(3)課題
 表示が1行なので、文字入力に苦労します。改行すると、一行目が画面から消えて、全体のレイアウトが把握できません。
 フロッピー(FD)がないので、入力した文章が保存できません。印刷物として保存するしか方法はありません。つまり、一度電源を切ると、文章が保存されないので、文章を読み出して、それに追加・訂正が出来ないです。
 忠臣蔵の史料を入力・整理する場合、固有名詞(特に人名や歴史用語・地名)の入力は仕事上の生命線です。その単語登録も出来ないのです。
 例えば、大石内蔵助の文字を入力する時の方法をご紹介します。
(1)「おお」と入力して「大」の字を確定します。
(2)「いし」と入力すると「意思・意志・医師・石」が表示され、その中から「石」を確定します。
(3)「ない」と入力すると「無い・内」が表示され、その中から「内」を確定します。
(4)「くら」と入力すると「倉・鞍・庫・蔵」が表示され、その中から「蔵」を確定します。
(5)「すけ」と入力すると「介・輔・助」が表示され、その中から「助」を確定します。
 大変な労力が必要です。しかし、その苦労も、電源を切った瞬間に「さようなら」なんです。

ワープロの魅力と課題
最初のワープロ(東芝のルポ)
(1)ワープロとの出会い
 それは1986年のことでした。今から22年前のことです。
 初めてコンピュータ(ワープロ)を購入しました。その頃、ワープロを持っている人は職場でも少数で、購入するにあたっては、色々な人や業者に聞きまくりました。結局、多くの人が推薦した東芝のルポを購入しました。
(2)魅力
 ともかく文章が保存が出来るようになりました。
 フロッピー1枚2DDの容量は640KBです。1KBは1024バイト(1文字=2バイト)ですから、数字の上では3万2000字の保存が可能ということです。教科書1ぺ一ジが大体900字ですから、約36ぺ一ジが保存できる計算になります。一度保存して、再び呼び出すと、入力した内容がそのまま画面に表示されました。「バンザイ」を三唱したくなるほどの感激でした。
 フロッピー1枚が数千円する時代です。100枚以上も購入しましたが、この時のデータはコンバートされて、今も現役で活躍しています。「文字データベース」は不思議な威力を発揮しています。
 表示も5行に増え、単語登録も20個が出来るようになりました。
(3)課題
 表示が5行になったとはいえ不十分です。カーソルで上に行ったり下に行ったり、スクロールにとても時間がかかりました。
 単語20がともかく登録できるようになりました。しかし、その節が終わると、登録した単語を削除して新しい単語を登録します。そのことの繰り返しで、とても無駄な時間を消費しました。
 保存したフロッピーの量が膨大(100枚以上)になると、目的のデータを読み出すのに、フロッピーを出したり、入れたり、また入れ替えたりと、大変でした。とても手間と時間を浪費しました。
(4)パソコン余話
 私は、この時44歳の社会科の教師で、運動部の指導にも熱中していました。その私がワープロを購入した事で、若い先生(特に英語の先生)を中心にワープロの購入が始まりました。
 しかし、最後まで抵抗したのは、やはり、国語の先生です。その理由は、おおげさに言えば「日本文化消滅論」(直筆文字の個性ある美しさが死ぬ)や「活字擁護論」(ドット=点を集合させて作られているワープロ文字は活字には勝てない。この先生は電動タイプライターの愛用者で、活字を拾っていた)です。 
 ワープロの強みは文章を保存して修正する機能であり、文字の美しさを競うものではありません。またドット数をどっと増やせば活字に近くなります。そう言い張っていた先生も今はワープロの愛好者であることはいうまでもありません。
 デジタル派とアナログ派のこのような戦いも、今ではほろ苦い想い出となっています。これ以降パソコン派対ワープロ派、情報処理派対データベース派、デジタルビデオ派対デジカメ派、Html派対ワード派、動画派対静止画派と私の戦いは続きますが、それらの前哨戦ともなった記念すべき記録です。