進歩とは、課題を見つけ、課題を克服することにあり(05)
初期ノート・パソコンの魅力と課題
 ハードディスクがない課題を克服するためにパソコンとしては2台目のNECのNX/Cを購入しました。 家でも出来ますし、学校でも出来ます。ラップトップより格段に小型化したノートパソコンです。
 ハードディスク(HDD)は500MB(メガバイト。FD500枚分)、メモリは9MB,CPUはi486(20MHZ)にODPをかませて、60MHZにしました。
 MS−DOS版としては最後なので、機能的には当時としては最高ではなかったかと思います。
 今(この記事を書いた1997年のこと)も現役で頑張っており、メモリを足してWINDOWS95として蘇っています。
 ワープロは一太郎のバージョン4です。

写真(1)
 写真(1)はNECの初期ノートパソコンのNECのNX/Cとフロッピー(FD)です。

パソコンの魅力(1)
(1)OCR(文字認識ソフト)
写真(2)
 写真(2)は、原稿の史料(アナログ)です。

四 赤穂浪士の筆記
心元ノ段常々御病身ノ御事二侯間、左様ノ御事ト存

被仰聞候御書面ノ内此方ヨリノ書付二相認侯儀ハ尤
御報不申候、左様御心得可被成侯
彼仁今程ハ本所二被居侯由縫二御聞届被成侯由大慶
侯、此方ニテモ寺井方:其通承届侯、尤動キ有
之侯哉無御油断御気ヲ可被附侯
貴様方御登ノ時節ハ兎角岡島罷下侯テノ上ト存侯、
此段モ本書二申入侯
山科ヘノ御状相届可申侯、アノ辺ノ趣ハ本書二申入
侯通二侯故不具
小山氏ヨリ健成申参侯由弥以難心得存侯、此男内
マタ膏薬カト存候、此頃十四日ノ会ニモ十一日ノ会
ニモ岡本ヨリハ不出来ノ了簡ニテ以不届ノ仁ト存
侯、惣右我折々侯キ
弥兵衛殿御連拝見仕侯、今日状数込侯故乍慮外
不能御報侯、宜御執成奉願侯、安丘ハ衛殿ヨリ幸右衛
門方へ御出侯半、辱奉存侯由申侯
叉之丞・勘助山科ニテ神文仕侯由御聞被成侯由私ハ
未不仕侯、承合左様ニモ可仕候、其元ニテ前原事神
文御尤二奉存侯、拙老ハ兎角無ニノ志ノミ込兼侯、
原氏潮田ヘノ御状明朝早遣可申侯御状相達候御返
事迄如此御坐侯、以上
 正月十七日             源吾判
    郡兵衛様
    安兵衛様
    兵左衛門様
  大高源吾へス返報留メ
(以下略)
写真(3)
 写真(3)は、スキャナとOCRでに取り込んだ史料(認識率99%)です。
 OCRとは文字認識ソフトのことです。WinReaderPlusU(当時10万円以上)を使用して、忠臣蔵の書籍や雑誌をテキストファイル形式(TXT)に自動的に取り込んで(B5判で約3分)、一太郎で修正して保存します。これにより驚異的にデータベース化が可能となりました。
 趣味から仕事に進んだ例がこの場合である。OCRであらゆる文字原稿(教科書、史料、新聞や雑誌、問題集)をテキストファイル化し、一太郎で修正しました。そしてこの文字データをdBASEで情報処理化しました。その結果、社会科としてほぼやれるところまで来たように思います。
 私のこの提案に、「教育をパソコン代用しようとしている」とか「手作りは温かみがあり、この無駄が教育には必要なことである」と反論する先生が当時は多かった。
 私は無意味な無駄を省き、それで空いた時間を生徒と接する方がより革新的と主張しました。生徒もチョーク&トークの教え方より、時代が要請する「新しい道具」を使った授業を支持しました。今は、パソコンを使えない先生はいても、パソコンを否定する先生はいません。

パソコンの魅力(2)
(1)ハードディスクに500MB(教科書500冊分)が入り、2HDのフロッピー(FD)1枚に山川出版社の教科書『詳説世界史』(26行×32文字列×356頁=54万5792文字)が保存できるようになりました。単語も無限といえる程登録出来るようになりました。前出の『日本史用語集』に『世界史用語集』の固有名詞や地名を登録し、カタカナ用語も全て登録しています。

(2)『日本史用語集』・『世界史用語集』の人名・地名・歴史用語などを登録した上記の辞書は、「一太郎」・「ワード」上で扱えるようにして、山川出版社と契約しました。私の定年の年(2001年5月)に、現実に全国販売されました。2002年には「一太郎」のジャストシステム社からネット販売されています。2008年、バージョン3にグレードアップして、ロングセラーになっています。

(3)私の持論の「仕事の延長が趣味につながり、趣味の延長が仕事につながる」流に従えば、忠臣蔵の書籍や雑誌の1冊分がFD1枚に収まるようになりました。大石内蔵助や瑤泉院、浅野内匠頭などの人名、呉服橋や三次などの地名、伝奏屋敷な浅野家上屋敷など膨大な固有名詞が全て登録できるようになりました。

(4)課題であった処理速度も、以前の100倍近く早くなり、例えば大学・学部・学科コードはセンター前期・後期、推薦などが加わって複雑化して1万3000レコード以上に成っていますが、dBASEVPLUSで、いとも簡単に必要な形で処理できるようになりました。

パソコンの魅力(3)
 マイクロソフト社が発売したMS−DOSの上位OSであるWINDOWS3・1が発売されました。マウスによるドロップ&ドロー機能によりMS−DOSでは不可能であった二次元のことやグラフィカルなことが可能となりました。
 マックに比して、未熟ではありましたが、パソコンの明るい未来が予見できました。

初期ノート・パソコンの課題
(1)コンピュータの歴史は、課題を次々と短期間に克服していった時代といえます。と同時に人間の欲望もどんどん膨らんでいきます。
 文字データの情報処理化は完成しましたが、文字と写真との融合が出来ていません。日本史テスト問題では、文字に写真を切り貼りして、文化史や経済史の問題を作成しています。
(2)また、それを何に使うのかというと、画面上で見るしかありません。個人の情報としては完璧ですが、苦労して入力した貴重なデータベースを私蔵しています。情報を共有化したり、交換したりして、時間の節約や事務の軽減化が必要です。より確実な情報であるための検証をはかることが必要である。

パソコン・リーダーは先見の明が必要
 MS−DOSの上位OSであるWINDOWS3・1が発売されたことは先述しました。しかし、マックの付録みたいでした。
 しばらくして、県立学校のMS-DOSのパソコンが更新されることになりました。県の教育委員会の指導のままに、A高校は3・1を20台導入しました。しかし、隣のB高校ではWINDOWS95が、しかも40台導入されました。B高校の担当者に聞くと、「WINDOWS95が発売されることは分かっていたし、体験上、生徒1人に1台使えなければ意味が無いと思っていました。2条件を満たさなければ導入を辞退する」と注文をつけたといいます。県に勤める知人は「責任をもって使える条件を現場から聞けた、いい例だ」と言っていました。
 WINDOWS3・1のパソコン室は眠れる森の美女の部屋となっているし、WINDOWS95は2003年の今も現役で動いていることは周知の事実です。私が愛用しているホームページビルダー・バージョン3は、WINDOWS95時代のソフトで、XPの時代も、VISTAの時代も活躍しています。