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| 神戸新聞|教育 沖縄戦集団自決訴訟/軍の深いかかわり認定 六十三年前、太平洋戦争末期にアメリカ軍が沖縄(おきなわ)に上陸し、沖縄は「鉄の暴風」と呼ばれる激しい攻撃(こうげき)を受けました。住民も巻きこまれ、手りゅう弾(だん)を爆発(ばくはつ)させたり、くわや棒でなぐり合ったりして集団で自殺(集団自決)、スパイと疑われた人が日本軍に殺される事件も多発したとされています。 ノーベル文学賞も受賞した作家大江健三郎(おおえけんざぶろう)さんは一九七〇年、日本と沖縄の関係を深く考える「沖縄ノート」という本を出版しました。その中で集団自決が起きた理由について「部隊の行動を妨げないために、また食糧(しょくりょう)を部隊に提供するため、いさぎよく自決せよ」という日本軍の命令があったと記述しました。 これに対し、自決を命じたとされた元隊長らが、名誉(めいよ)を棄損(きそん)されたとして裁判を起こしました。 憲法はだれもが自由に何かを書いたり、発言したりする「表現の自由」を認めています。でもそれがだれかの評価をおとしめる内容(名誉棄損)だったら、ふつうは許されません。許されるには、公表された事実が@多くの人が正当な関心を持つ内容であるA真実であるか、真実であると信じるだけの理由がある―などの条件を満たす必要があります。 例えば、国会議員が多額の借金をしていたら、みんなが知っておいた方がいいことなので、公表しても名誉棄損になりません。 今回は集団自決がなぜ起きたかという問題なので、みんなが知りたいことです。しかし「命令したというのは真実ではない」というのが元隊長らの主張でした。 大阪地方裁判所は、集団自決に日本軍が深くかかわっていたと認め、命令があったとは断定できないが、命令があったと大江さんが信じる理由があったとして、名誉棄損を認めませんでした。 沖縄戦は広島(ひろしま)、長崎(ながさき)の原爆投下と並ぶ悲惨(ひさん)な歴史です。正しく伝えていく必要があります。 (掲載日:2008/04/13) |