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「古事記」

『古事記序』
「臣安万侶言す。是に天皇詔りたまひしく、『朕聞く。諸家のもたる所の帝紀及び本辞、既に正実に違ひ、多く虚偽を加ふと。今の時に当りて其の失を改めざれば、未だ幾年をも経ずして其の旨滅びんと欲す。斯れ乃ち那家の経緯、王化の鴻基なり。故惟に帝紀を選録し、旧辞を討□し、偽りを削り実を定めて、後葉に流へむと欲ふ』とのりたまひき。時に舎人有りき。姓は稗田名は阿礼、年は是れ二十八。人と為り聡明にして、目に度れば口に誦み、耳にふるれば心に勒しき。即ち阿礼に勅語して、帝皇日継及び先代旧辞を誦み習はしめたまひき。然れども運移り世異りて、未だ其の事を行わず。 伏して惟るに皇帝陛下、(中略)ここに於て旧辞の誤り忤えるを惜しみ、先紀の謬り錯えるを正さんとして、和銅四年九月十八日を以ちて臣安万侶に詔して、『稗田阿礼の誦む所の勅語の旧辞を撰録して献上せよ』者り。謹みて詔旨に随いて子細に採り□う。(中略)并せて三巻を録し、謹みて以て献上す。臣安万呂、誠惶誠恐、頓首頓首。
  和銅五年正月二十八日      正五位上勲五等太朝臣安万侶謹上」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)