(s0116)

「東大寺献物帳と正倉院」

『正倉院宝物』
「太上天皇の奏為に国家の珍宝等を捨てて東大寺に入るる願文 皇太后御製
(前略)
故に今、先帝陛下の奏為に国家の珍宝、種々の翫好及び御帯・牙笏・弓箭・刀剣、兼ねて書法・楽器等を捨てて東大寺に入れ、盧舎那仏及び諸仏菩薩、一切の賢聖を供養す。伏して願わくは、茲の妙福寺を持して仙儀を翼け奉り、永く法論を馭して、速やかに花蔵の宝刹に至り、恒に妙楽を受けて、終に舎那の法莚に遇い、普賢と将にして宣遊し、文殊と共にして展化し、仁、百億を霑おし、徳、三千を被わんことを。
(中略)
盧舎那仏に献る
 御袈裟、合わせて九領(中略)
 雑集一巻 白麻紙、紫檀軸、紫羅□、綺帯
  右、平城宮御宇後太上天皇の御書。(中略)
 平城宮御宇後太上天皇、藤原皇后を礼聘するの日、相い贈る信弊の物一箱 封(中略)
 金鏤の新羅琴、一張 枕尾並びに桐木、緋地に月形を画く、紫地の錦袋を納む、緋裏。
 木画紫檀の棊局一具 牙の界、花形の眼、牙の床脚、局の両辺に環を著く。局の内に棊子を納むる亀形の器を蔵す。金銀の亀甲の□に納む。
黒作懸佩刀一口。(中略)
  右、日並皇子常に佩持するところ、太政大臣に賜う。大行天皇即位の時、便に大行天皇  に献ず。崩ずる時、また大臣に賜う。大臣薨ずる日、更に後太上天皇に献ず。
白の練綾の大枕、一枚 夾纈の羅の帯三条を着く。
(中略)
右の件り、皆是れ、先帝翫弄の珍にして、内司供擬の物なり。疇昔を追感し、目に触るれば崩催す。謹みて以て盧舎那仏に献じ奉る。伏して願わくは、此の善因を用て冥助に資し奉り、早く十聖に遊び、普く三途を済り、然る後に鑾を花蔵の宮に鳴らし、蹕を涅槃の岸に住めんことを。
  天平勝宝八歳六月廿一日」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)