(s0156)

「延喜の諸改革」

『類聚国史』
「太政官符
  まさに勅旨開田並びに諸院諸宮及び五位以上、百姓の田地舎宅を買い取り閑地荒田を占  請するを停止すべき事
 右、案内を検ずるに、頃年勅旨開田遍く諸国に在り。空間荒廃の地を占むと雖も、これ藜元産業の便を奪うなり。しかのみならず、新たに庄家を立て、多く苛法を施す。 課責尤も繁く、威脅耐えがたし。且つ諸国□濫の百姓、課役を遁れんがためややもすれば京師に赴き、好んで豪家に属す。或は田地をもって詐りて寄進と称し、或は舎宅をもって巧みに売与と号す。遂に使を請いて牒を取り、封を加えYを立つ。国吏矯餝の計を知ると雖も、権貴の勢を憚り、口を鉗み舌を巻きて敢えて禁制せず。これによりて、出挙の日は事を権門に託して正税を請けず、収納の時は穀を私宅に蓄えて官倉に運ばず。賦税の済しがたきこと斯に由らざるはなし。しかのみならず、賂遺の費すところ、田地遂に豪家の庄となり、□構の損するところ、民烟長えに農桑の地を失う。終に身を容るる処無く、還りて他境に流冗す。(中略)左大臣宣すらく。勅を奉るに、(中略)よろしく当代以後勅旨開田皆悉く停止し、民をして負作せしめよ。その寺社百姓の田地は、各苦験に任せて本主に還し与えよ。かつそれ百姓、田地舎宅をもって権貴に売り寄するは、蔭贖を論ぜず土浪を弁ぜず、杖六十に決せよ。(中略)ただし元来 相伝して庄家たること、券契分明にして国務に妨げなき者はこの限りに在らず。 仍りてすべからく官符到る後百日内に弁じ行い、状を具して言上すべし。
  延喜二年三月十三日」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)