(s0168)

「大名田堵の経営」

『新猿楽記』
「三の君の夫は出羽権介田中豊益。偏に耕農を業となし、更に他の計ない。数町の戸主、大名の田堵なり。兼ねて水旱の年を想い、鍬・鍬を調え、暗に腴迫の地を度り、馬把・犁を繕う。或いは堰塞・堤防・□渠・畔畷の功に於て田夫農人を育み、或いは種蒔・苗代・耕作・播殖の営に於て五月男女を労うの上手なり。作るところの□・□・粳・糯の苅頴、他の人に勝り、舂法、毎年増す。しかのみならず薗畠に蒔くところの麦・大豆・大角豆・粟・黍・稗・蕎麦・胡麻、員を尽くして登り熟す。春は一粒を以て地面に散らすと雖も、秋は万倍を以て蔵内に納む。凡そ東の作より始めて、西の収に至るまで、聊も違誤なし。常に五穀成就稼穡豊膽の悦を懐き、未だ旱魃・洪水・蝗虫、不熟の損に会わず。検田・収納の廚、官使送迎の饗、更に遁避するところなし。況や地子・官物・租穀・租米・調庸、代稲・□米・使料・供給・土毛・酒直・種蒔・営料・交易・佃・出挙・班給等の間、未だ束把合勺の未進を致さず」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)