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「末法思想と埋経の流行」

『奈良県金峯神社蔵』
「南贍部洲大日本国左大臣正二位藤原朝臣道長、百日潔斎し、信心の道俗若干人を率い、寛弘四年秋八月を以て金峯山に上り、手ずから書写し奉る妙法蓮華経一部八巻、無量義経・観普賢経各一巻、阿弥陀経一巻、弥勒上生下生成仏経各一巻、般若心経一巻、合わせて十五巻、これを銅篋に納めて金峯に埋む。(中略)法華経は、これ釈尊の恩に報じんがため、弥勒親近の蔵王に値遇せんがため、弟子の無上菩提のためなり。(中略)阿弥陀経は、(中略)これ臨終の時、心身散乱しえず、弥陀尊を念じ、極楽世界に往生せんがためなり。弥勒経は、(中略)これ九十億劫生死の罪を除き、無生忍を証し、慈尊の出世に遇わんがためなり。仰ぎ願わくは、慈尊成仏の時に当り、極楽界より仏所に往き詣で、法華会の聴聞となり、成仏の記を受けん。その庭にこの所に埋め奉る経巻自然に湧出し、会衆をして随喜を成さしめんことを。(中略)
弟子道長敬しみて日す。
   寛弘四年八月十一日」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)