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「平氏一門の栄華」

『平家物語』
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。奢れる者ひさしからず。ただ春の夜の夢の如し。猛き人もついにはほびぬ。
六波羅殿の御一家の君達といひしかば、花族も英雄も面をむかへ肩をならぶる人なし。されば入道相国のこじうと、平大納言時忠卿ののたまひけるは、『此一門にあらざらむ人は皆人非人なるべし』とぞのたまひける。かゝりしかば、いかなる人も相構えて其ゆかりにむすぼゝれむとぞしける。衣紋のかきやう、烏帽子のためようよりはじめて、何事も六波羅様といひてければ、一天四海の人皆是をまなぶ。(中略)
吾身の栄花を極るのみならず、一門共に繁栄して、嫡子重盛、内大臣の左大将、次男宗盛、中納言の右大将、三男知盛、三位中将、嫡孫維盛、四位少将、惣じて一門の公卿十六人、殿上人三十余人、諸国の受領、衛府、諸司、都合六十余人なり。世には又人なくぞみえられける。(中略)
日本秋津嶋は纔かに六十六箇国、平家知行の国三十余箇国、既に半国をこえたり。其外庄園田畠いくらという数知らず。綺羅充満して、堂上花の如し。軒騎群集して、門前市をなす」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)