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「後鳥羽上皇批判」 |
| 『神皇正統記』 |
| 「頼朝勲功は昔よりたぐひなき程なれど、ひとへに天下を掌にせしかば、君としてやすからずおぼしめしけるもことわりなり。況や其跡たえて、後室の尼公、陪臣の義時が世になりぬれば、彼跡をけづりて御心のままにせらるべしと云も一往いひなきにあらず。しかれど、白河、鳥羽の御代の比より政道のふるきすがたやうやうおとろへ、御白河の御時兵革おこりて奸臣世をみだる。天下の臣ほとんど塗炭におちにき。頼朝一臂をふるいて其乱をたひらげたる、王室はふるきにかへるまでなかりしかど、九重の塵もおさまり、万民の肩もやすまりぬ。上下堵をやすくし、東より西より其徳に伏せしかば、実朝なくなりてもそむく者ありとはきこえず。是にまさる程の徳政なくして、いかでたやすくくつがへさるべき。縦又うしなはれぬくべくとも、民やすかるまじくば、上点よもくみし給はじ。 次には王者の軍と云はとがあるを討じて、きずなきをばほろぼさず。 頼朝高官にのぼり、守護の職を給ふ。これみな法皇の勅裁なり。わたくしにぬすめりとはさだめがたし。後室その跡をはからひ、義時久く彼が権をとりて、人望にそむかざりしかば、下にはいまだきず有といふべからず。一往のいはればかりにて追討せられんは、上の御とがとや申すべき。 謀叛おこしたる朝敵の利を得たるには比量せられがたし。かゝれば、時のいたらず、天のゆるさぬことはうたがひなし。但、下の上を剋するはきはめたる非道なり。終にはなどか皇化に順ざるべき」 |
| 現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
| 『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
| 『精選日本史史料集』(第一学習社) |
| 『日本史重要史料集』(浜島書店) |
| 『詳解日本史史料集』(東京書籍) |