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「御成敗式目条文」

『御成敗式目』
「一、諸国守護人奉行の事
   右、右大将家の御時定め置かるる所は、大番催促・謀叛・殺害人 付け たり、夜討、強盗、山賊、海賊等の事なり。しかるを近年に至りては代官  を郡郷に分補し、公事を庄保に宛て課せ、国司に非ずして国務を妨げ、地  頭に非ずして地利を貪る。所行の企、甚だ以て無道なり。…早く右大将家  御時の例に任せて、大番役并びに謀叛殺害の外、守護の沙汰を停止せしむ  べし。
第五条
 一、諸国の地頭、年貢所当の抑留せしむる事
   右、年貢を抑留するの由、本所の訴訟あらば、即ち結解を遂げ勘定を請  くべし。犯用の条若し遁るる所なくば、員数に任せてこれを弁償すべし。  猶ほこの旨に背き難渋せしめば、所職を改易せらるべきなり。
第六条
 一、国司領家の成敗、関東の御口入に及ばざる事
  右、国衙庄園神社仏寺領は本所の進止たり。沙汰出来するに於ては今更御  口入に及ばず。若し申す旨ありと雖も、敢えて叙用せられず。次に本所の  挙状を帯さず越訴を致す事、諸国庄公并びに神社仏寺領、本所の挙状を以  て訴訟を経べきの処、その状を帯さざらば既に道理に背く歟。自今以後、  成敗に及ばず。
第十八条
 一、所領を女子に譲与するの後、不和の儀あるにより、その親悔返すや否や  の事
右、男女の号異なると雖も、父母の恩これ同じ。爰に法家の倫、申す旨あ  りと雖も、女子則ち悔返さざるの文を憑み、不孝の罪業を憚るべからず。  父母も亦敵対に及ぶの論を察し、所領を女子に譲るべからざる歟。親子義  絶の起なり。教令違犯の基なり。女子若し向背の儀あらば、父母宜しく進  退の意に任すべし。これに依り女子は譲状を全うせんがため、忠孝の節を  竭くし、父母は撫育を施さんがため慈愛の思を均しくするもの歟。
第二十三条
 一、女人養子の事
  右、法意の如くんばこれを許さずと雖も、右大将家の御時以来当世に至り、  其の子無きの女人等所領を養子に譲与する事、不易の法あげて計ふべから  ず。しかのみならず都鄙の例、先蹤これ多し。評議の処、尤も信用に足る  歟。
第二十六条
 一、所領を子息に譲り安堵の御下文を給ふの後、其の所領を悔還し他の子息  に譲り与ふる事
  右、父母の意に任すべきの由、具に以て先条の載せ畢ぬ。仍って先判の譲  りにつき安堵の御下文を給ふと雖も、其の親これを悔還し他の子息に譲与  するにおいては、後判の譲に任せて御成敗有るべし。
第四十二条
 一、百姓逃散の時、逃毀と称して損亡せしむる事
  右、諸国の住民逃脱の時、其領主等逃毀と称して妻子を抑留し、資材を奪  ひ取る。所行の企、甚仁政に背く。若し召し決せらるるの処、年貢所当の  未済有らば、其の償ひを致すべし。然らずば早く損物を糾し返さるべし。  但し、去留においては、宜しく民意に任すべきなり。


第四十八条
 一、売買所領の事
  右、相伝の私領を以て、要用の時沽却せしむるは定法なり。而るに、或は  勲功に募り、或は勤労に依りて、別の御恩に預かる輩、恣に売買せしむる  の条、所行の旨其の科無きに非ず。自今以後慥に停止せらるべきなり。若  し又制符に背き沽却せしめば、売人と云ひ、買人と云ひ、共に以て罪科に  処せらるべし」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)