(s0338a)
「鴨長明の無常観」 |
『方丈記』 |
「行く川のながれは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまるためしなし。世の中にある人と住家と、たまかくの如し。玉敷の都の中に棟を並べ甍を争へる、尊き卑しき人の住居は、代々を経てつきせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家は稀なり。 或は去年破れて今年は造り、或は大家滅びて小家となる。住む人もこれに同じ。ところもかはらず、人もおほかれど、いにしへ見し人は二三十人が中にわずかにひとりふたりなり。朝に死に、夕に生るゝならひ、たゞ水の泡にぞ似りける。不知、うまれ死ぬる人、いづかたよりきたり、いづかたへか去る。又不知、かりやどり、たが為にか心をなやまし、なにゝよりてか目をよろこばしむる。そのあるじとすみかと無常をあらそふさま、いはゞあさがほの露にことならず。或は露おちて花のこれり。のこるといへどもあさ日にかれぬ。或は花しぼみて露なほきこえず。きえずといへども夕をまつ事なし」 |
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現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
『精選日本史史料集』(第一学習社) |
『日本史重要史料集』(浜島書店) |
『詳解日本史史料集』(東京書籍) |