(s0385)

「動乱期の歴史書」

『難太平記』
「六波羅合戦の時、大将名越うたれしかば、今一方の大将足利殿、先皇に降参せられけり、と太平記に書たり。かへすがへす、無念の事也。此記の作者は宮方深重の者にて、無案内にて押て此の如く書たるにや、寔に尾篭のいたりなり。尤も切り出さるべきをや。すべて此太平記の事、あやまりも空ごともおほきにや。昔、等持寺にて法勝寺の恵珍上人、此記を先三十余巻持参し給ひて、錦小路殿の御目にかけられしを、玄恵法印によませられしに、おほく悪ことも誤も有しかば、仰に云、是は且見ぶ中にも以の外ちがひめおほし、追て書入、又切出すべき事等有、其程外聞有るべからざるの由、仰有し。後に中絶也。近代重て書続けり。次でに入筆共を多く所望してかかせければ、人高名数をしらず書り。さるから随分高名の人々も且勢ぞろへ計に書入たるもあり、一向略したるも有にや」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)