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「建武式目内の容」

『建武式目』
「  建武式目の条々
鎌倉元の如く柳営たる可きか、他所たる可きか否かの事。
 就中、鎌倉郡は文治右幕下、始めて武館を構へ、承久義時朝臣天下を併呑し、武家に於ては尤も吉土と謂ふべき哉、居所の興廃は政道の善悪によるべし。これ人凶は宅凶にあらざるの謂なり。但し諸人若し遷移を欲せば、衆人を情に随ふべし。
一、政道の事
 右、時を量り制を設くるに、和漢の間、何法を用ひらるべきや。先ず武家全 盛の跡を遂ひ、尤も善政を施さるべし。然らば宿老・評定衆・公人などの済 々たり、故実を訪はんにおいては、何の不足あるべきか。古典に日く、徳こ れ嘉政、政は民を安んずるにあり、と云々。早く万人の愁を休むるの儀、速 やかに御沙汰あるべきか。其の最要粗左に註す。
一、倹約を行わる可き事
一、群飲佚遊を制せらる可き事
一、狼籍を鎮めらるべき事
一、私宅の点定を止めらる可き事
一、京中の空地は本主に返さる可き事
一、無尽銭・土倉を興行せらる可き事
或いは莫大の課役を充て召され、或いは打人を制せられざるの間、すでに断 絶せしむるか。貴賎の急用たちまちに闕如せしめ、貧乏の活計いよいよ治術 を失う。いそぎ興行の儀あらば諸人安堵の基たるべきか。
一、諸国の守護人は殊に政務の器用を択ばる可き事
当時の如くんば、軍忠を募りて守護職に補せらるか。恩賞に行わるべくんば 庄国を充て給うべきか。守護職は上古の吏務なり、国中の治否は只この職に よる。尤も器用を補せらるれば撫民の儀たるべきか。
一、権貴并に女性・禅律僧の口入を止めらる可き事
一、公人の緩怠を誡めらるべし。ならびに精選あるべきこと。
一、固く賄貨を止めらる可き事
一、殿中は内外に付きて諸方の進物を返さるべき事。
一、近習の者を撰ばるべき事。
一、礼節を専らにすべき事。
一、廉義の名誉あらば、殊に優賞せらるべき事。
一、貧弱の輩の訴訟を聞こしめさるべき事。
一、寺社の訴訟は事によって用捨ある可き事
一、御沙汰の式日・時刻を定めらるべき事。
以前十七箇条、大概斯の如し。(中略)方今諸国の干戈いまだ止まず、尤も跼蹐あるべきか。古人日く、安きに居てなお危きを思うと。いま危きに居て蓋し危きを思うべきか。恐るべきはこの時なり、慎むべきは近日なり。遠くは延喜天暦両聖の徳化、近くは義時泰時父子の行状を以て近代の師となし、殊には万人帰仰の政道を施さるれば、四海安全の基たるべきか…
 建武三年十一月七日     真 恵
   (人衆  前民部卿以下8名略)       是 円」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)