(s0593)
「天草版イソップ物語」 |
| 『イソポのハブラス』 |
| 「 イソポのハブラス ラチンを和して日本の口と為すものなり。ゼズスのコンパニヤのコレジョ天草においてスペリヨレスの御免許としてこれを板に刻むものなり。 御出世より 1593 読誦の人へ対して書す 惣じて人は実もなき戯れ言には耳を傾け、真実の教化をば聞くに退屈するによって、耳近きことを集め、この物語を板に刻むこと、喩えば樹木を愛するに異ならず、その故は樹には益なき枝葉多しといへども、その中に良き実あるをもって枝葉を無用と思はぬが如くなり。故にスペリヨレスの仰せをもってこの物語をラチンより日本の言葉に和げ、いろいろの穿鑿の後、板に開かるゝなり。これ真に日本の言葉稽古の為に便りとなるのみならず、善き道を人に教へ語る便りともなるべきものなり。 イソポが作り物語の抜き書 犬が肉を含んだ事 或る犬、肉を含んで川を渡るに、その川の真中で含んだ肉の影が水の底に写ったを見れば、己が含んだよりも、一倍大きなれば、影とは知らないで、含んだを棄てて水の底へ頭を入れて見れば、本体が無いによって、即ち消え失せてどちらをも取り外いて失墜をした。 下心 貪欲に引かれ、不定なことを頼みを掛けて我が手に持った物を取り外すなといふことぢあ」 |
| 現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
| 『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
| 『精選日本史史料集』(第一学習社) |
| 『日本史重要史料集』(浜島書店) |
| 『詳解日本史史料集』(東京書籍) |