(s0627)

「年貢収納の原則」

『落穂集』
「大炊頭殿三十日計御暇にて古河へ帰城の節、逗留の間領分見分ありて後、家老共を呼出して申聞かせられ候は、権現様御代毎歳秋先に至り、諸御代官衆支配所への御暇下され候節は、何れも御前へ召させられ御直の上意を下され候節、兼々も仰聞かせられ候通り、郷村の百姓共は死なぬ様生きぬ様にと合点致して収納申付け候様にとこれある上意をば毎歳仰出されたる事に候。先年我等当地を拝領の節、其の方達へも存じ候通り領地の分は残りなく巡見致したるに、何れの郷村に於ても百姓共の居宅に家らしき家とては一軒もなかりつるに、今度不慮に御暇下し置かれ候に付き、此の度領地の内所々を見巡り候に、何れの村々にても一廉の家作りの百姓共あまた相見え候は不審に思はるる義なり。若し生き過ぎたるにてはこれ無きか、郡奉行代官共に能々申付け、収納の義に念を入れさせ候様にと申され候由、親仁兵衛物語仕るとて、大野知石雑談を我等承りたる事に候。若し、か様の義を御聞はべし、権現様流の収納の致し方などと申触れ候やと推量仕る事に候。惣じて七十年余りも以前の義は、諸国共に秋先に至り候へば、其の村の名主たる者の家には、水篭木馬など申す物を仕度致し 、百姓共の中にて私を構へ収納致し兼ね候者共をば、件の水篭へ入れ木馬に乗せ責せたけて収納致させ申し如くこれあり候処に、近年の義は在辺の百姓風情のもの迄も、正路に罷成り律義に収納をも致し候と相見へ、件の水篭木馬等の義の沙汰なく罷成り候なり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)