(s0672)

「定免法の賛否」

『経済録』
「当代田租を取るに法あり。一つには視取、二つには定免なり。(中略)当代には定免に勝れる善き法はなし。視取は甚しく民に害あり。子細は、代官の秋成を視るを、今の俗に毛見といふ、代官の毛見に行くとき、其の処の民数日奔走して、供具を営み、道を除ひ、館舎を洒掃し、前日より種々の珍膳を調へて、其の来るを待つ。当日には庄屋名主など云者、人馬肩輿を牽て境迄出迎ふ。館舎に至れば、種々の饗応をなし、其の上に種々の進物を献じて其の歓楽を極め、手代等は云に及ばず、僕従の至て賎き者迄も、其の品に応じて、夫々に金銀を贈る。斯の如くする其の費幾許といふことを知らず。(中略)是の如く代官の私曲をあし、民の代官に賄賂を輸ぶ状は、純昔久しく田舎に住で、親しく見聞したることなり。是偏に視取より起れり。民の痛み国家の害といふは是なり。定免なれば、毎年の毛見に及ばず、定まれる免の如く収納すること相違なし。然れば民より代官に賂ふこともなければ、小民の役使せらゝこともなく、金銀の費ることもなき故に、民の苦みなし。さる故に少し高免に取ても、定免民の為に利あり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)