(s0677)
「相対済まし令の批判」 |
『山下幸内上書』 |
「一、金銀出入りの公事御取上げ御座なく候事を、天下徳政にては心得、一切
借り方の者ども、大名小名下々に至る迄、返弁仕らず候に付、追て徳政に てはこれ無なと仰分けらるゝ様に遊ばされ候事、天下の御触事に間違の儀
少しも御座候はゞ、御役人徳なきと申すべき哉、をのづから上の御悲と成 候事。 一、右の仰分けられにても、金子の公事御取上げ候上は、曽て返弁金は仕ら ず、これに依り新規貸金仕り候もの御座なく候。日本の宝すくみとなり、 困窮の種となり候。縦ば流に木を横ふごとく、終に殃のはしと成るべき御 事に御座候。金銀は通るを以てたからと仕り候。悪敷道には移り安き世の 習に御座候へば、当時大名方の借り金、京・大坂は申すに及ばず、江戸の 町人共の買懸り等迄、先年切金に成り候をも曽て遣さゞる輩多く、古には 御座なく候大名の門に、妻子をつれたる町人共付しとひ、或ひは駕篭馬の 尾に取付き願ひかなしみ候といへども、其の恥をも曽て恥とせず、名より 利を取といふいやしき心の移り候は、上に御しまつ多く、下より過料等多 く御取遊ばされ候。其の御心有によって自然と下へ御風儀移り申し候事。 日月の光世界を照すごとく、善悪共に上より下へ移る事は、雷の坤竺へ響 に同じ、うたがふべきにあらず。扨一旦借り人共徳をになふといへども、 後の為には又貸手のなきに困窮し、或ひは国主・郡主も悪事の報ひは頭を めぐらさゞる習ひに御座候得共、国々風雨捍損の難儀、年月を経ずして大 損仕り候事、最早御心当りも御座あるべく候。また重ての徳政と申上は、 大分の年数御座候もの故、徳政のあとは心安きものと承り伝へ申し候。只 いつとなしに金銀出入の公事御取上これ無しと御極成され候て、日本困窮 の本と成り候」 |
現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
『精選日本史史料集』(第一学習社) |
『日本史重要史料集』(浜島書店) |
『詳解日本史史料集』(東京書籍) |