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「町火消」

『正宝事録』
「 覚
 風烈の節、町々にて商売物道具等仕廻り候程の節、若し町方にて出火出来候はば、其の所より風上弐町脇左右弐町宛都合六町、壱町の出人三拾人宛極め、早速欠付消留め申すべく候。小家抔の類は引こぼち消留め申すべく候。これに依り兼て有合候階子・鳶口・斧・細引抔手近き所に指置き、出火の場所え持出すべく候。惣て火消道具新規に拵え候には及び間鋪候。尤も風烈の節は町方商売等も仕らず罷有り候儀に候得は、欠付遅参候はば吟味の上急度申付くべく候。其のため、与力同心心是又早速場所え差出し、罷出で候町人を相改めさせ申すべく候。
一、風吹申さず候節も右の通相心得、居合ひ候者欠付候様仕るべく候。然共常 々は商売等にも罷出で候儀に候間、壱町より定め候三拾人出がたき節も、有 合候者指出すべく候。併し五六人より減じ候はば是又吟味の上急度申付くべ く候。尤も此の節も与力同心指出し、改めさせ申すべく候。
一、出火の場所にて消掛り鎮寄り候共、火消参り候はば右人数上げさせ、町人 も其の侭罷有りともども消し、大火に成らざる様に仕るべく候。但し、右の 節何分の儀これ有候共、論じ合申さず、消し候事第一に仕るべく候。其の分 に成りがたき儀は、重て其の奉行所え訴出申すべく候。
一、町方より懸け候階子よりも火消上り下り致し候共、尤も論じ合間鋪候。火 急にて外に階子これ無き時は、火消懸け候階子よりも下り候様仕るべく候。 此の段火消の面々えも申談ずべく候。
一、水の手の儀は、井戸不足の所は火消えも申談じ候間、論じ合申さず、直に 汲み候様仕るべく候。
一、壱町より人数目印のため、有合せ候小のぼり、夜中は挑灯持出し候様に仕 るべく候。
一、欠付人数の内え諸事世話役のため、名主月行事一所に罷越すべく候。
右の通り急度相守申すべく候。万一場所に於て、何事に依らず堪忍成りがたき儀これ有り候共、其の場にては堅く論じ合申す間敷候。自然違論及び候はば理非に構はず、越度申付くべく候。以上。
  享保三年戌十月」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)