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「男尊女卑」

『女大学』
「一、夫、女子は成長して他人の家へ行き、舅・姑に仕るものなれば、男子よ りも、親の教ゆる がせにすべからず。(中略)
一、女は容よりも、心の勝れるを善とすべし。(中略)
 一、女子は稚時より、男女の別を正しくして、仮初にも戯たることを見聞し むべからず。古しへの礼には男女は席を同じくせず。(中略)
一、(中略)一度嫁しては、其の家を出ざるを、女の道とすること、古しへ 聖人の訓なり。若し女の道にそむき、去るゝ時は、一生の恥なり。されば 婦人に七去とて、悪きこと七あり。一には、gには順ざる女は去べし。二 には、子なき女は去べし。是妻を娶は、子孫相続の為なればなり。(中略) 三には、淫乱なればさる。四には、悋気ふかければさる。五に、癩病など の悪き疾有ればさる。六に、多言にて慎なく、物いひ過は、親類とも中悪 くなり、家みだるゝものなれば去べし。七には、物を盗む心あるはさる。 此の七去は、皆聖人の教なり。女は一度嫁して、其の家をだされては、仮 令ふたゝび富貴なる夫に嫁すとも、女の道にたがひて、大なる辱なり。
一、女子は、我家にありては、わが父母に専孝を行ふ理なり。されども夫の 家に行ては、専をわが親よりも重じて、厚く愛しみ敬ひ、孝行を尽すべし。 親の方を重じ、舅の方を軽ずることなかれ。gの方の朝夕の見まひを闕べ からず。gの方の勤べき業を怠るべからず。若の命あらば、慎行て背べか  らず。万のこと舅・姑に問て、其の教に任すべし。舅・姑もし我を憎み誹  給ふとも、怒恨ることなかれ。孝を尽して誠をもってつかゆれば、後はか  ならず中好なるものなり。
一、婦人は別に主君なし。夫を主人と思ひ、敬ひ慎て事べし。軽しめ侮るべ からず。惣じて婦人の道は、人に従ふにあり。夫に対するに、顔色言葉づ かひ慇懃に謙り、和順なるべし。不忍にして不順なるべからず。奢て無礼 なるべからず。これ女子第一の勤なり。夫の教訓あらば、其の仰を叛べか らず。疑しきことは夫に問て、その下知に随ふべし。夫問こと有ば、正し く答ふべし。其の返答疎なるは、無礼なり。夫若し腹立怒ときは、恐れて 順べし。怒靜て、その心に逆べからず。女は夫をもって天とす。返々も夫 に逆ひて、天の罰を受べからず。
  (中略)
一、女は常に心遣して、其の身を堅く謹み護るべし。朝は早く起き、夜は遅 く寝、昼はいねずして、いゑの内の事に心を用ひ、織・縫・績・緝、怠る べからず。亦茶・酒など多く呑べからず。歌舞伎・小歌・浄るりなどの淫 れたる事を、見聴べからず。宮・寺など、都て人のおほくあつまる処へ、 四十歳より内は、余りに行べからず。(中略)
一、凡婦人の心様の悪き病は、和ぎ順ざると、怒恨ると、人を謗ると、物妬 と、智恵浅きとなり。此の五疾は、十人に七八は必あり。是婦人の男に及 ばざる所なり。自顧戒て改去べし。中にも智恵の浅ゆへに、五の疾も発る。 女は陰性なり。陰は夜にて暗し。所以女は男に比るに、愚にて目前なる可 然ことをも知らず。又人の誹るべきことをも弁へず。わが夫、わが子の災 と成べき事をも知らず。科もなき人を怨み、怒□詛、あるひは人を妬にく みて、わが身独立んと思へど、人に憎まれ疎まれて、みな我身の仇となる ことを知らず、最はかなく浅猿し。子を育つれ共、愛に溺れて習はせ悪し。 斯愚なる故に、何事も我身を謙て、夫に従べし」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)