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「赤穂事件の賛否」

『復讐論』
「関西一牧の士臣、大石ら四十有六人、亡君のために心を一にし党を結び、元禄十五年冬十二月十四日、讐を報ひ囚と為る。公、有司に命じ、詳審密察せしめ、罪を鞫して以て令を下し、彼の党をして自殺せしむ。(中略)天を同じうせざるの仇讐は、苫に寝ね刃を枕にし以てこれを復して可なり。生を偸み恥を忍ぶは、士の道に非ざるなり。法律に拠りてこれを論ずれば、則ち法を讐とする者は必ず誅せらる。彼、亡君の遺志を継ぐと雖も、天下の法を讐とするを免れず。これ悖驚にして上を凌ぐなり。執へてこれを誅し、天下後世に示すは、国家の典を明らかにする所以なり。二者同じからずと雖も、並び行はれて相悖らず。上に仁君賢臣ありて、以て法を明らかにし令を下す。下に忠臣義士ありて、以て憤りを□べ志を遂ぐ。法のために誅に伏するは、彼の心においてあに悔あらんや。古人のいはゆる治世久しければ則ち民心怠る。幸にいま唐虞の世に遇ひ、民、利を享うえ生を楽しむこと、未だこの時より盛んなるはあらざるなり。ここを以て天下の士、膏沢に沐浴して、怠惰の心生ず。遊談聚楽議し、習ひて軟熟と為る。彼の一挙に及びて、奮発興起し、以て義に向ふの心起こり、 君は臣を信ずるを知り、臣は君に忠なるを知るなり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)