(s0709)

「肥料の変化」

『民間省要』
「夫れ田地を作るの糞し、山により原に重る所は、秣を専ら苅用ひて田地を作るなれば、郷村第一秣場の次第を以て其の地の善悪を弁べし。近年段々新田新発に成尽して、草一本をば毛を抜ごとく大切にしても、年中田地へ入るゝ程の秣たくはへ兼る村々これ有り。古しへより秣の馬屋ごへにて耕作を済したるが、段々金を出して色々の糞しを買事世上に専ら多し。仍て国々に秣場の公事絶えず、又海を請たる郷村は、人を抱へ舟を造りて色々の海草を、又は種々の貝類を取てこやしとす。其外里中の村々は山をもはなれ海への遠く、一草を苅求むべきはなく、皆以て田耕地の中なれば、始終金を出して糞しを買ふ。古へは干鰯金一両分を買ふて粉にして斗り見るに、魚油の〆から抔は四斗五六升より漸く五斗位にあたりて、いかやうの悪敷も六斗にはあたらず。是享保子年まで五六年の間の相場なり。是を一反三百歩の田の中へふりて見れば、大桶の水へ香薫散を一ぷくふりたるにひとし。よって能入るゝと言者は、一反へ金弐両の内外入ざれば其しるしなし。惣て一切の糞しは皆干鰯を以て直段の目あてとす」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)