(s0710)
「農書」 |
| 『農業全書』 |
| 「又畿内にて早稲を作る法、先種子を雨水(正月中の事なり)の節に入りて後五日めに水にかし、廿日過て取上げ、十日目に干し、手引がんの湯を俵の上よりかけ、莚などをおほひ芽を出し、春分(二月中の事なり)の節に入りて苗代に蒔くべし。尤かゞしをさし、縄をはりて鳥をふせぎ、水のかけ引常のごとくして、苗代におく事五十日にて初苗とるなり。是より中田・晩田十日のどづゝ間を置いて、次第に種子を蒔くべし。五月の節より夏至までの間の雨を梅雨と名付く。此の時を失ふべからず。此の梅雨の説は農政全書に見えたり。若し手廻し怠り由断して、此のよき時分をとりうしなへば、後の手入を尽くしても、必ず実り少し。いかんとなれば暖かになるに随ひて、上に発生する気のみさかんにして、枝葉にはさゆれど、立根に精の入事すくなきゆへ、一日も早くうへて秋の実りを求むべし。 惣じて田畠を作るに此の理りを弁へ、工夫鍛錬せじしては、利潤を得る事なりがたし。早過る損は少なく、遅き損は限りなし。稲のみにかぎらず、作り物において、専ら工夫鍛錬し、才覚手廻しを用ひては、利潤まさらずといふ事なし。殊に稲は天下一同に広く作る物なれば、少の出来まし有ても、積りては莫大の穀まさり、天下国家の賑ひとなり、諸民を救ひ助る根元となれば、一入心を尽くすべし。力たらずして、事ゆかずとばかり心得るは愚なる事なり。才覚工夫を用ふべし」 |
| 現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
| 『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
| 『精選日本史史料集』(第一学習社) |
| 『日本史重要史料集』(浜島書店) |
| 『詳解日本史史料集』(東京書籍) |