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「三井八郎右衛門」

『世事見聞録』
「駿河町、三井八郎衛門といふは日本一の商人といふ。是が先祖は寛永の頃、勢州松坂より江戸へ奉公に出、少しの元手金を拵へて在所へ帰り、相手を壱人語らひて、木綿を一駄づゝ隔番に江戸に持出て商をせしと云。夫が段々増長して日本一の大豪福となり、大店三ケ所ありて千余人の手代を遣ひ、一日に金弐千両の商ひあれば祝をすると云。弐千両の金は米五千俵の価なり。五千俵の米は五千人の百姓が一ケ年苦みて納る所なり。五千人が一ケ年苦みて納むべきものを畳の上に居て楽々と一日に取事なり。又地面より取上る所が二万両に及ぶといふ。是五万石の大名の所務なり。十月蛭子講の祝に用る酒五十樽、吸物にする鴨の代百両以上なりと云。是を以て万事の大造を知るべし。江戸の外、京・大坂・堺・伊賀・伊勢に出店あり。其外、諸国に仕入店といふものありて、何方にても其土地の一番に唱らるると云」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)