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「町人の大名貸」 |
| 『町人考見録』 |
| 「 二村寿安 一、越後家の浪人なりしが、一伯卿の砌浪人と成り京住す。居宅は下立売室町 両替屋善六がやしき、元は寿安が宅地なり。高屋などは縁者なりしが、是も 大分の金銀を薩摩・細川など、其の外御大名方へ取替へ置き、石川と同時に 潰れ、尤も其の身一代にて果て申し候。夫故大名がしの商ひは博奕の如くに て、始め少々宛の損を見切ず、夫が種となり元を動さんと、終に又かしては 損亡となり潰れるなり。偖大名の金借り役人留守居抔は、夫をお鳥にいひな し、世話にい ふ鼠のあぶらげとやらにて、終にわなにかかり大損いたし申 し候。然らばこの借貸は止み申すべき事なるに、博奕をうつもの、はじめよ り負んとてかかるものは壱人もこれなく、又町人へかし候得ば大金は廻り難 し。其の上町人身上さし支ひる時は、少々の分散を請取り申し候て、相手は 跡方もなくなり申し候ゆへ、金銀持ても致すべき様なくて、大名がしをはじ めるなり。扨その大名借の金銀、約束の通り取引これ有り候得ば、此の上も なき手廻しにて、人数はかかり申さず。帳面壱冊にて、天秤壱挺あると埓明 き、誠に正真の寝て居て金儲けとは此の事なり。古語の如く、一得あれば一 失ありとて、左様のうまき事は大なる尻が来るものなり。あながち大名がし にはよるまじく、能々考あるべき事なり」 |
| 現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
| 『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
| 『精選日本史史料集』(第一学習社) |
| 『日本史重要史料集』(浜島書店) |
| 『詳解日本史史料集』(東京書籍) |