「公室を富ましめんとて、其の城下の町人等の商売に仕来るものを領主より、役所あるひは会所をたて其の所にて売買の沙汰を致し、農家より商家へ直うりを禁じなど仕り給ふ事あり。其の益つもりては大ひなれば、忽ち御勝手向よくなり、かゝるにしたがひ、部下の智恵あるもの其の元締がたにかやうかあああやうに成られなば、つもりては是ほどの益と相成り候など申出づれば、其の趣きを取用ひぬれば其の益又少からず。然るに又別人よりかやうかやう成られ候へば御益となり候など申出づる故、又取用ひ候まゝ、いつとなく御益すぢと号する事多く出来るものなり。是等は多く部下の商人の利益と相成るべきを領主にて奪ひ上げ給ふなれば、ひそかに恨むといへども威勢に恐れ誰ありて申立てるものなく、変あるを待ちて元のごとくならん事を願ふもの夥しくして、終には騒動を引出す基となりたる事まゝ聞及びぬ。全く御勝手を早くよくせんとて斯く行はせらるゝ事なれば、悪法とは云がたけれど、元来天理に戻り、先ず下民を安富せしむる事を勤めざるゆゑに、却りて手もどりするを見及ぶ事多し。部下にて取扱ふべきものを領主より売買し給ふ事は勘弁のあるべき事なり。前に
も云ふごとく国の益筋を取扱ふ人なれば、此の位の事は弁へなくして人も帰伏せざれども、右いふごとく脇より追々御益筋と号しすゝむるを一ツ用ひ二ツ用ひ、終に種々に手を廻し行ふやうになり行くものと見ゆれば、努々おろそかに見はず計り、つらつら考ふべき事ぞかし」 |