(s0750)

「大黒屋光大夫」

『北槎聞略』
「又或時学士アンガリタより光大夫に、日本の服をもちて学校に参るべしと云越たり。其の頃は小袖三つ、袷羽織、綿入羽おり、佩刀一把もち居し故、キリロとともなひ右の品々をとりもたせ行ければ、先、日本の服に改させ、高き台に登らしめ、アンガリタ、キリロもおなじく台に登り、その下に学寮の児童等をはじめ諸生残らず呼集め、日本の人を見るべしとてキリロ訳を伝へ、此方の風俗などを生徒等に語り聞せしとぞ。此の学校に万国寄語の書あり。部を分ちて、日本語をも載たり。何れも語の末に、の事の事と書す。たとへば鼻を鼻の事、耳を耳の事、といふがととし。これは以前此方より漂流せし者どもに問て記せし由。かの問たる時にそれは何の事、かれはこの事と答へたるを、直に之事までを一語と心得てかく記しおきしなるべし。この書を光大夫に刪定すべきよし望まれける故、日々に通ひて六日にして卒業す。書中の語多く南部辺の言葉にて、しかも下賎の語多し。古来、皇朝より彼地に漂流せし事今度共に四度なり。以前は三度はみな南部の人となりしとぞ」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)