(s0753)

「安藤昌益の社会批判」

『統道真伝』
「四民は士農工商なり。是れ聖人の大罪・大失なり。君の下に武士を立てて衆人直耕の穀産を貧り、若し強気にして異輩に及ぶ者これ有る則は、此の武士の大勢を以て捕り拉んが為めにこれを制す。亦聖人の令命に背き党を為し、敵と為る者には、此の武士を以てこれを責め伐たんが為めに兼ね用ふるなり。是れ自然の転下を盗む故、他の責め有ることを恐るるなり。果して伏羲王君を為りて上に立ちて栄曜を為し、□の女□氏に至りて軍起りて転下大いに兵乱す。是れより乱世続きて絶ゆること無く、後世万万自然の転下を盗みて止まざる故、又兵乱も止むこと無し。皆聖人の罪なり。(中略)自然の世に於ては治乱の名有ること無し。聖人出でて上に王に立ちて後、転下治乱有るなり。治は乱に対して有る則ば、治は与に乱なり。君賢なる則は長く治まり、君不肖なる則は早く暴乱す。太公が言なり。是れ少し長く少し短く言ひても乱は乱なり。故に治まる世には心欲乱し、乱世には形見死亡す。乱して、常に欲欲・乱乱として止むこと無し。是れ聖人世に出でて以下、これ有ることを太公早く言ふなり。然る則ば世の為めに大敵なる者は聖人なり。(中略)
 農は直耕・直織・安食・安衣・無欲・無乱にして自然の転子なり。故に貴ならず賎ならず、上ならず下ならず、賢ならず愚ならず、転定に応じて私無き者なり。これを以て士の下に布き、己れが養父を以て蹈下と為すは、聖人の罪の恐れなり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)