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「寺小屋」

『寺小制誨之式目』
「一、人と生まれ物かゝざるは人に非ず。是を亡目に縦へたり。且は師の恥、 且は親の恥、都て其身の恥辱なり。三ツ子の心、百までと云へり。志を起 し此の恥を忘れず、手習精出さるべき事。
一、机に懸りて、無益の雑談、或ひは欠気し、延びし、或ひは居眠り、鼻を 啜り、紙を噛み、筆の管を□へ、習はざる人を手本とする事、極悪人の所 業なり。人は兎もあれ角もあれ、其身は神妙に、心を止め、一字々々に、 よく見入習ひ申さるべき事。
一、寺に来ては、宿のよからぬ事を白地に語り、宿所に帰りては、己が悪事 を掩ひ隠さんがため、寺をあしざまに沙汰する事、不精なる子供の常にて 候間、一口よりつつしみ申さるべき事。
一、他人より己が手跡いか程勝り候共、謙下して、自慢高慢の心持つべから ず。幼少の時、纔かも此の心候へば、成人の後、大きなる立身の障りと成 り候事。
 一、七尺避って師の影を踏まず、一字の恩に舌を抜くと云へり。主、親、師 匠に向ひて一言も口答申すべからず。制訓の趣、厚く信じ、弥々人の道の 重き事を尋ね問ひ申さるべき事。
一、善を積めば福を得、悪をなせば禍来る。人として孝を思はざるは畜生な り。道を信ぜざるは木石なり。此の教訓の愚に存じ用ひず信ぜざる輩、恥 を重ね、名を降し、身を立所を失ひ、後悔、眼前たるべし。是を則ち、天 罰とは申し候事」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)