(s0781)

「田沼の権勢」

『甲子夜話』
「田沼氏の盛なりしときは諸家の贈遣さまざまに心に尽したることどもなりき。中秋の月宴に島台軽台を始めまけ劣らじと趣向したる中に、或家の進物は小なる青竹籃に活撥たる大鱚七八計に些少の野蔬をあしらひ、青柚一つ、家彫萩薄の柄の小刀にてその柚を貫きたり。家彫は後藤氏の彫る所、世の名品、その価数十金に当る…又田沼氏中暑にて臥したるとき候問の使价、此節は何を翫び給ふやと訊ふ。菖盆を枕辺に置て見られ候と用人答しより、二三日の間諸家各色の石菖を大小となく持ちこみ、大なる坐敷二計は、透間も無く並べたてて取扱にもあぐみしと云。その頃の風儀かくの如くぞありける」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)