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「百姓一揆禁令」

『御触書天明集成』
「 飛騨・信濃国百姓徒党に付御書付
強訴・徒党・逃散は、前々より御法度の処、遠国の百姓共弁もこれ無く立ちがたき願を企て、強訴に及び、亦は徒党の上遺恨これ有る者の家居を打こはす類これ有り。其の度々御仕置相成り、去る巳年も飛騨国のもの共地所の改を難渋せしめ、越訴致し、江戸表に於て吟味中、国許の社地え大勢集まり、御代官陣屋え強訴せしめ狼籍に及び、厳敷吟味の上、頭取の内大胆なる働致し候もの四人は磔、十二人は獄門、壱人死罪、差継ぎ候もの十三人遠島、夫より以下品々御仕置申付け、取鎮め候もの共は白銀これを下され、其の身一代帯刀、永々苗字を御免、其の外強訴徒党に加はらざるもの共、追々御褒美御誉等これ有り候処、当春信濃国高井郡・水内郡の百姓共、御年貢期月の儀を申立て、騒立候に付、吟味の上、今般頭取のもの弐人獄門、差継のもの六人遠島、其の以下追放等御仕置き相済み、差押加はらざるものは、右同様御褒美御誉等これ有り。飛騨と信濃は隣国にて、飛騨の御仕置を信濃にて承はらざる事はこれ有る間敷、何様悪事を致し候故の事とのみ存たるにてこれ有るべき哉、以の外心得違なる事に候。都て願筋は、村役人を以て、御料は御代官、私領は領主地頭へ訴へ、ぎんみを 請くべき事 にて、勿論御代官地頭非分と存じ候儀これ有らば、其の筋の奉行所え訴出づべき事に候。然るを徒党強訴すれば、縦令立つべき願にても、其の趣意に拘はらず、頭取は申すに及ばず、夫々御仕置申付け候事に候、御仕置に相成り候もの、其の身は首を刎ねられ、先祖よりの株を潰し、父母妻子は路頭に迷ひ候。弁へもこれ無き愚昧の業にて、誠に不便の至に候。畢竟常々村役人共等閑に心得、百姓共へ教へ申さざる故の儀共相聞こえ候間、得と弁へさせ、触知らせ置くべく候条、永く忘却致す間敷ものなり。
右の通り御料は御代官、私領は領主地頭より村々へ相触れ、村々にて写し、高札場、名主の宅前、或ひは木戸々々え張置き、毎月小百姓に至迄読聞かせ申すべく候。
  安永六酉九月」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)