(s0799)

「七分積金」

『宇下人言』
「江戸町々、町入用とて無益にこれまた入用かゝりたり。これによって、近年の入用をならして、其の事々簡易渋らざる様に奉行所にてさたせしかば、その入用多く減じぬ。その減じたるうちの七分は、町々永続かこひ籾つみ金の料として、年々のけをかれ、上よりも御金壱万両町々へ下され、これまたつみ金とともにかし付け、或ひは籾をかひ納め、または鰥寡孤独なんどのよるべきもの、又は火にあふて家たつべき力なき地主なんどへ下され料に仰出せらる。猶のこる三分のうち、一分は町入用のましに下され、二分は地主へ下さる。これまでかしやなど住めるもの軒毎にあくたせん・番銭とて出して、実はその入用にもならず、故にこの役銭をゆるされしなり。これまたその積金囲籾一とせにても少なからず。年をおひ侍らば、いか計りかの備になり侍らん。まづあらましかうやうほどにも饑饉の御備あれば、俄に乱階ともなり侍るまじき哉。
 此の入用といふは地主の出すなり。たとへば此の町は地代店ちんの上り高いかほど、うち町入用いかほど、地主の全くとるべきはいかほどと定りて、これらを家守なんどがはからひて町入用を弁ぜしなり。しかれば此の入用を減じて、その一分は町入用にさし加へ、二分は地主の増手取とし、七分はその町々にて囲籾積金になして、凶年の備とし、または鰥寡孤独なんどにほどこし与ふるなり。故に上納などいふことにはあらず。豪富の町人并びに江戸町々地主のうち五人づゝこれをつかさどりて納払をなすなり。さるにそのころに仰出され候を、たゞ上へ聚□せらるゝやうに思ひたがひて、あるはかくのごとく金銀上へあつまらば、天下の通用の金少なく成るべし、またはその減じたるも書面にて実の減はさしてもなければ、その七分とていだすも、地主の別にいだすにあたり侍れんどとさまざまいひのゝしりて、人々こはいかゞあらんこの事行はるまじきかといひやひたり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)