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「尊号一件」

『楽翁公伝』
「只仮りの御虚号に候ても、御仏も御恩愛によりて、御位を踏まれず、御統紀を受けられずして、太上天皇の尊号これあるべき御道理曽て御座なく、殊に尊号宣下と申す儀は、猶以て御道理如何の筋に存じ奉り候。御名器は御仏の物にこれなき所、右の通り相成り候ては、御筋合然るべからざる儀に御座候。和漢共に在世の私世の私親に尊号これあり候儀はこれなき処、初めて承久三年北条義時逆威を以て九条帝を廃し、後鳥羽・土御門・順徳帝を遠国へ遷し奉り、後堀河院御即位なし、御父守貞親王に太上天皇の尊号を奉り候儀、先例に相成り、後花園院御時も、御私親伏見道欽親王、椿葉記など撰せられ、しきりに尊号を望まれ候に付、後小松崩御已後十五年を経て、文安四年尊号これあり、是等の御先例は、いづれも承久・応仁衰乱の時の儀にて、御引用これあるべき儀にては、曽てこれあるまじく存じ奉り候」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)