(s0810)

「山県大弐の放伐論」

『柳子新論』
「世その世に非ず、国その国に非ず。礼の因るべきなく、法の襲ぐべき者なきをや。然らば則ちそのいはゆる故事とは、ただこれ割拠の遺俗、戎蛮の余風なり。これを以て天下の民を御す、その事を敗り物を害するに非ざる者、幾んど希なり。偶まその不可なるを知ってこれを改むるあるも、またただ苟且の輩、一事の利を見て、後害を図らず。即ち朝にはこれを是として、夕にはこれを非とし、昨は則ち得として、今は則ち失とす。(中略)かくの如きの輩、固より経芸の一端をも知らず。なんぞ以て治安の策を挙ぐるに足らんや。たとひそれをして一官に居るを得しむるも、志す所は財利に過ぎず。財利の人を以て、財利の権を執る、財利何の時かやまん。これ皆その害の大にして且つ見るべき者、而も一人としてその非を知る者なきなり。豈に愚の甚だしきに非ずや。董仲舒いはく、政をなすの用は、これを琴瑟に譬ふ。調はざること甚だしければ、必ず絃を解いて、更にこれを張りて、仍ち鼓すべきなりと。今や天下の琴瑟、調はざることまた甚だし。これ宜しく更張すべきの秋なり。機は失ふべからざるなり。士を擢んでて相となし、卒を抜きて将となすは、固より不可なきなり。 義を以て礼を興し、礼を以て人を制し、賢良の士を挙げ、諂諛の徒を誅し、賄賂の途を塞ぎ、廉恥の端を開くに若かず。而る後始めて治をいふべきなり。而る後始めて道を語るべきなり。これをこれ天下の大政といふ」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)