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「天保の薪水給与令」

『徳川禁令考』
「天保十三年条
異国船渡来の節、二念無く打払い申すべき旨、文政八年仰せ出され候。然る処当時万事御改正にて、享保寛政の御政事に復せられ、何事によらず御仁政を施され度との有難き思召に候。右については、外国のものにても難風に逢ひ、漂流にて食物薪水を乞候迄に渡来候を、其の事情相分らざるに、一図に打払い候ては、万国に対せられ候御処置とも思召されず候。依って文化三年異国船渡来の節、取計方の儀につき仰せ出され候趣相復し候様仰せ出され候間、異国船と見受け候はば、得と様子相糺し、食料薪水等乏しく帰帆成り難き趣候はば、望みの品相応に与へ、帰帆致すべき旨申し諭し、尤上陸は致させ間敷候。併し此の通り仰出され候に付ては、海岸防禦の手当ゆるがせにいたし置き、時宜など心得違ひ、又は猥に異国人に親み候儀はいたす間敷筋に付、警衛向の弥々厳重に致し、人数共武器手当等の儀は、是よりは一段手厚く、聊にても心弛みこれ無き様相心得申すべく候。若し異国船より海岸様子を伺ひ、其の場所人心の動静を試し候ためなどに、鉄砲を打懸け候類これ有るべき哉も計り難く候得共、夫等の事に同様致さず、渡来の事実能々相分り、御憐恤の御主意貫き候様取計い申すべく候。され共 彼方より乱妨の始末これ有り候歟、望の品相与へ候ても帰帆致さず、異儀に及び候はば速に打払ひ、臨機の取計は勿論の事に候、備向手当の儀は猶追て相達し候次第もこれ有るべき哉に候」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)