(s0822)

「阿蘭陀国王の開国勧告」

『日蘭三百年の親交』
「弘化元年和蘭国王書簡和解 天文方 渋川六蔵 訳解
 近来英吉利国王より支那皇帝に対し、兵を出して、烈しく戦争せし本末は、我国の船、毎年長崎に至って呈する風説書を見られて、既に知り給ふべし。(中略)謹みて古今の時勢を通考するに天下の民は速に相親しむものにして、其勢は人力のよく防ぐ所に非ず。蒸気船を創製せるより以来、各国相ひ距ること遠きも、なほ近きに異ならず。斯の如く互いに好を通ずる時に当て、独り国を鎖て、万国と相ひ親まざる国は、多数の国と敵視するに至るべし。貴国歴代の法に異国人と交を結ぶことを厳禁し給ひしは、欧羅巴州にて遍く知る処なり。老子日く、『賢者、位に在れば、特によく治平を保護す』。故に古法を堅く遵守して、反て乱を醸さんとせば、其の禁を弛むるは賢者の常経のみ。是れ殿下に丁寧に忠告する処なり。今貴国の幸福なる地をして、兵乱の為に荒廃せざらしめんと欲せば、異国の人と厳禁するの法を弛め給ふべし。これ素より誠意に出る所にして、我国の利を謀るには非ず。夫れ平和は懇に好みを通ずるにあり。懇に好みを通ずるは、交易に在り。冀くは、叡知を以て熟計し給はん事を」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)