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「フィルモアの国書」

『幕末外国関係文書』
「予が志、二国の民をして交易を行はしめんと欲す。是を以て日本の利益となし、亦兼ねて合衆国の利益と為さんことを欲してなり。貴国従来の制度、支那人及び和蘭人を除くの外は、外邦と交易することを禁ずるは、固より予が知る所なり。然れども、世界中時勢の変換に随ひ、改革の新政行はるゝの時に当ては、其時に随ひて新律を定むるを智と称すべし。然れども殿下若し外邦の交貿を禁停せる古来の定律を、全く廃棄するを欲せざるときは、五年或ひは十年を限りて允準し、以て其の利害を察し、若し果して貴国に利なきに於ては、再び旧律を回復して可なり。凡合衆国他邦と盟約を行ふには、常に数年を限りて約定す。而して其の事便宜なるを知るときは、再び其の盟約を尋ぐこととす。予更に水師提督に命じて、一件の事を殿下に告明せしむ。合衆国の舶、毎歳角里伏爾尼亜より支那に航するもの甚だ多し。亦鯨猟の為、合衆国人、日本海岸に近づくもの少からず。而して若し颶風あるときは、貴国の近海にて往々破船に逢ふことあり。若し是等の難に逢ふに方っては、貴国に於て、其の難民を撫□し、其の財物を保護し、以て本国より一舶を送り、難民を救ひ取るを待たんこと 、是れ予が切に請ふ所なり。予また水師提督ペルリに命じて、次件を殿下に告げしむ。蓋日本国に石炭甚だ多く、又食料多きことは、予が曾て聞知れる所なり。我が国用ふる所の蒸気船は、其大洋を航するに当て、石炭を費やすこと甚多し。而して其石炭を亜墨利加より搬運せんとすれば、其不便知るべし。是を以て予願はくは、我が国の蒸気船及び其他の諸船、石炭食料及び水を得んが為に、日本に入ることを許されんことを請ふ。若し其の償ひは、価銀を以てするも、或ひは貴国の民人好む所の物件を以てするも可なり。請ふ、殿下、貴国の南地に於て、一地を択び、以て我が舶の入港を許されんことを。是予が深く願ふ所なり。
  一八五二年十一月十三日」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)