(s0834)

「戊牛の密勅」

『孝明天皇紀』
「安政五年八月八日付
皇国重大の儀、調印の後言上、大樹公叡慮恩伺ひの御趣意も相立ず、尤も勅答の御次第に相背き、軽率の取計ひ、大樹公賢明の処、有司心得如何と御不審に思召され候。右様の次第にては、蛮夷の儀は暫く差置き、方今御国内の治乱如何と、更に深く叡慮を悩ませられ候。何卒、公武御実情を尽され、御合体永久安全の様にと偏に思召され候。三家あるひは大老上京仰出され候処、水戸・尾張両家慎み中の趣聞し食され、且つ又、其の余宗室の向にも同様御沙汰の趣も文し召し及ばれ候。右は何等の罪状に候哉、計られ難く候得共、柳営羽翼の面々、当今、外夷追々入津、容易ならざるの時節、既に人心の帰向にも相拘るべく、かたがた宸衷を悩せられ候。兼て三家以下諸大名、衆議を聞し食され度く仰出され候は、全く永世安全・公武御合体にて叡慮を安んぜられ候様思し召され候(中略)。彼れ是れ国家の大事に候間、大老・閣老其の他三家・三卿・家門・列藩外様・譜代共、一同群議評諚これ有り、誠忠の心を以て得と相正し、国内治平・公武合体、弥、御長久の様、徳川御家を扶助これ有り、内を整へ外夷の侮を受けざる様にと思召され候」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)