(s0847)

「航海遠略策」

『防長回天史』
「開国鎖国、交和戦闘の儀、取捨の権、悉く神州に在りて外国より煽動仕りえず候はば、開港ばかりに止どまらず、航海の術御開き、五洲を横行候様仰付けられ候はゞ、聊かも叡慮に相触れ候儀はこれ有る間敷哉とも相窺はら候。将又、幕府に於て、既に外国と条約御取結び、御交通在らせられ候上は、古来の御制度にのみ拘はせられ候ては御国勢挽回の期これ無く、非常の功は非常の時ならでは成り難きに付、中興の御大業を立たせられ御国威御更張の機会もまた此の時にこれ有り候。(中略)幕府に於て一旦奮然として御国威挽回の儀、屹と思召し立せられ、今一応列藩へも御詢り候て、叡慮御伺ひ相成り、速に大艦を造り巨砲を鋳択し、将また士を練り、国を開き海に航し、神州固有の忠孝を以て我体となし、洋夷日新に功利を以て我用となし、和交通商の形を以て五洲各国を横行し其の情実熟知の上、皇化を五洲に施し候様遠略の御国是相定められ、改めて勅諚を以て右御国是の旨仰出され、幕府に於て叡慮遵奉し、列藩へ台命を下され、列藩にても叡慮遵奉し仕り候様相成り候はゞ、人心一和、偸安忌戦の陋習一朝に相改まり、人心心胆を錬磨し智識を発明する道に向ひ、富国強兵 の術、開物成務の功も容易に成就仕るべく候」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)