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「岩倉具視の王政復古計画」

『岩倉公実記』
「万延元年六月付
臣具視、熟ら目方今天下の大勢を観察仕り候に、御国内、億兆の人民は億兆の心を懐き銘々その方向を異に仕り候て、外は五蛮の大敵、諸港に輻湊仕り、ややもすれば□端を開き、御国政に干犯仕り、その垂涎する所の土地を併呑すべきの勢も相見え申し候。誠に皇国危急の秋にして、憂慮に堪へず候。これに依り、其の匡済の長計を愚考仕り候には、関東へ御委任の政柄を隠然と朝廷の御収復遊ばされ候御方略に拠らせられ、先づ億兆の人心を御収攬、その帰向する所を一定させ候て、輿議公論に基づき、御国是を儼然と御確立遊ばされ候ははでは相成り難しと存じ奉り候。目今、関東の覇権は最早地に墜ち候て、昔の強盛にはこれ無く、井伊掃部頭は大老の重職に居り候て、自己の首領さへ保護仕り候難く、路頭に於て浪人の手に相授け申し候。是れ明確たる一証に御座候。箇様に覇権の地に墜ちたる関東に恩依頼遊され候て、内憂外患を防遏仕り、皇威御更張と申す儀は、世俗の諺に申し候長竿を以て天上の星を敲き落とすが如き者に御座候て、徒労多く実効を見ること能はざる儀と存じ奉り候。因て、関東え御委任の政柄を隠然と朝廷え御収復遊され候方略に拠せられ、輿議公論に基づき御国是を御確立 遊され候儀、天下の為め長計これに過ぎずと存じ奉り候」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)