(s0867)

「天保の改革批判」

『ありやなしや』
「水越の御勝手向取扱ひの儀、不行届あれば、加判の列御免となる。閏九月十三日と聞くとひとしく、定めて即時閣老邸引払ひを仰出さるべし。左すれば家財持運びにかこつけて宿恨を□さんと思ふ者、午の八つ時頃より、いづこよりか出で来にけん、枴にもつこうをかたげて西丸下に集はんと、和田倉・馬場先の御門を入る者絡繹として絶えず。然るに差控丈仰付られたるまゝにて引払ひにならねば、夜五つ時頃より、右の人足体の者を始め、幾千人の町人ども、心の遣る瀬なく鯨波の声を揚げ、門内に石つぶ手を打つけ、やがては邸前の辻番所一ケ所を打壊したり。余も十四日の朝其状を目撃したり。其の物音の凄まじきを聞き、会津藩にては物頭一人、騎馬にて人数を率ひ警固を為し、古河侯及び西丸大手御番所・桔梗御番所等よりも、人数を出して、是等の人を制し居る程に、鳥居甲州は火事装束にて出で来り同心に命じて制止し、四つ時過に至って漸く靜りたり。其の騒ぎ大方ならず。場所柄に似あはざる事にて其の怨を含む者多きは、昔日の田沼に勝れりといふ者ありき」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)