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「上知令ー代官の反応」

『浮世の有様』
「築山茂左衛門は五里四方自分の支配地となれる事を嬉しがり、暴に鈴木町にて屋鋪を広げて、大に普請をなし、手代共を数人新に召抱などして、大に権勢を賑ひ、村々の検見に棹を入て、此度、此一件に付江戸より出来られし役人と共々に走せ廻りしが、水野が仕くじりて、上地止めになれる御達しあるやいなや、田地に入れ掛たる棹をも其の侭に打捨て、早々に引取しと云ふ。おかしかりし事なりしとぞ。又村々の百姓共は躍り上りて大に歓び酒肴を調へ、餅をS搗などいたし、其の領地々々の陣屋々々持運び、陣屋にても大歓びにて酒を与へなどして、十日計の間は何れも大うかれにうかれ立ち、角力興行商人に出来り、物入も厭ふことなく大悦びてうかれ上り飛上り、日々大坂雑喉場に出来り、肴を買ひ上げ、日々市場に肴を売切らし困りぬる程の事なりしと云ふ。古今未曽有の変事なりと云べし。これ全く神君の叡慮あらせられて入込になし置れし深き御趣意をも弁へず、諸侯にして武道をもしらず、姦智に長ぜし処より忠義の志なく、只慾深きけたはづれの算盤にて、かゝる騒動を引出せしものなり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)