(s0873)

「世直し」

『鴨の騒立』
「時は廿三日七つ時なり。足助村地頭本多御代官、仮同心四人により棒を持たせ、外鎗一筋、仲間二人御召連れ、村入口御固めの処、党の者共、ドヤドヤと乱入り、何の苦もなく同心の持たるより棒を奪取り河へ投込み、鎗は薮の中へそ投棄ける。代官腹は立ども詮方なく、大声にて呼りける。『汝等願の趣聞届けたり。早々引取れよ』とあれども聞いれず。目ざす処は西町の酒屋なりと、相図の竹筒フウフウと吹出しければ、前後の者共、一同にときの声を発し四方を囲み、声高らかに呼りて日く、『汝等よく聞け。金銀のあるにまかせ多くの米を買ひしめ、貧乏人の難渋を顧みず、酒となして高値に売り、金銀かすめ取りたる現罰逃るべからず。今日只今、世直し神々来て現罰を当て給ふ。観念せよ』と呼り呼り、家も蔵も一同に打崩しける。此時、貯置きたる壱朱金三升ばかりもありしを取出し、町中へ投散りしけるとかや」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)