(s0892)

「パークスの英国策論」

『中山忠能履歴資料』
「大君は、日本一統の君主たる様最初条約の節に言しなれども、彼れは只諸侯の長にて、僅に日本半国のみ領分なるに、自ら日本君主と唱へしは、是れ名分不正にして僣偽なり。数多の国軍領したる独立の諸侯共、開港を好まざるに非れども、彼等に一切評議せず。彼共今其条約を承諾せざるは恠しむに足らざるなり。(中略)
只今迄仇敵の如くなりし大名共梢外国の交易を好み、且領分領内の港を開きたきと思ふこと明に見へるなり。然らば彼等の港を開くとても、二十家に近き独立諸侯の領内に尽く開くに及ばず。只一二の最も交易に便りなる場所を見立、開かば足れり。然し日本諸侯一致せずして、只独り大君とのみ条約を維持せんと欲すとも決して能はざるなり。今諸侯共は大君の令を遵奉せず、又交易利潤をも得ず、只条約は大君と結し其条約を妨ること決して相成すと云て、手を束て傍観し居様に見えたり。願くは我等赤心を以て改革を評議せん。其故は、我々条約を只一箇の諸侯と結ぶことを好まず、日本全国の便宜を謀り度ものなり。其故は、外にも彼と権勢の同じき者数多あるを以てなり。然則只今の条約に新に諸侯との条約を加ゆるか、或は条約改革せん。左れば只諸侯共喜ぶのみならず、又交易の利潤を得て、大君の譜代諸侯に至る迄困窮せし苦を免るべし」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)