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「大久保忠寛の大政奉還論」

『松平春嶽全集』
「御用部屋へ若年寄・大目付・御目付等召呼び、相談致し居り候。越中守は私の建言を御採用在らせられ候ならば、異見申上ぐべしと申したり。老中夫は嫌疑を憚らず異見遠慮なく申立つべしといへり。越中守進んでいふ、内外の困難実に恐入候、到底徳川家にて天下の政権を音掌握在らせられ候事は六ケ敷事と存じ候。これに乃り時勢を御量りにて、天下の政権を京都へ御返上在らせられ、徳川家は諸侯に列せられ、東照宮御領地在せられ候方、却て東照宮御始御歴代々へ対せられ候ても、御孝行相成るべし、御家の御安堵これに過ぎずと申述べたり。一同は不平の顔色にして、一言もいひ出るものなし。はたして越中守の先見たがはず、感ずべき事なり。此の越中守の心を後世に伝へんと思ふがゆへに、ここに記しに。一翁の先見は勿論、徳川家第一の功臣は大久保一翁・勝安芳なり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)