(s0915)

「大政奉還の上表」

『山内家文書維新史』
「臣慶喜、謹みて皇国時運の沿革を考候に、昔し綱紐を解き相家権を執て、保平の乱、政権武門に移てより祖宗に至り、更に寵眷を蒙り、二百余年子孫相受、臣其職を奉ずと雖も、政刑当を失ふ事不少今日の形勢に至候も、畢竟薄徳の所致、慙懼に堪へず候。況や当今、外国の交際日に盛なるにより愈朝権一途に出申さず候ては、綱紀立ち難く候間、従来の旧習を改め、政権を朝廷に奉帰、広く天下の公議を尽くし、聖断を仰ぎ、同心協力共に皇国を保護仕候へば、必ず海外万国と並立つべく候、臣慶喜国家に尽くす所、是に過ぎずと奉存候。去り乍ら猶見込の儀も之有り候得ば、申聞くべき旨諸侯へ相達し置候。之に依て此段謹て奏聞仕候。
     以上
 慶応三年十月十四日  慶喜」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)