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「陸前国登米郡の訴訟」

『登米郡史』
「明治三年正月、登米郡上沼村神職七郎作といふ者、同郡鴇波村輩を煽動し、先年売渡したる地所を、今般、王政復古御一新の廉に基き、無代償を以て、唯取戻すに宜し、万一県庁にて裁決ならざる時は、太政官に訴ふべし、勝利疑ひなしと瞞着しなければ、素より頑愚蒙昧なる賎民、おのの盟約をなし、神水を汲みて誓ひ、かつて天保飢饉に地所を売却し、戸口を養ひたるを忘れ、二十四人党を結び、買主に対して日く、今般王政復古の御旨意に基き、足下等に預けおきたる地所を返戻さすべしと、傲然と強迫に及ぶを以て、相手方にてもこれを怒り、大に紛擾せしが、ついに売方原告となり、県庁に出訴す。依りて三月十九日、県庁審理局にありて原告被告の法廷を開く。(中略)原告は唯に父祖の伝言のみを主張し、この年、金を取りて売たる地面を、金を以て買戻すとか、無代償にて取戻すとかの区別もなく、単に御一新の廉を口実とし、確たる証拠もなく、曖昧の談判に及びしは如何。(中略)また問ふて日く、先年売渡したる地面を、御一新の廉を以て取戻し、自由なるべしとは、何れより指令を得てかくの如く被告へ談じたるやと、頻に詰問せらる。ここに至りて、原告一言の 答弁なく、ただ恐入りて上申す。依て原告の申分相立たずと申渡さる」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)