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「版籍奉還」

『法令全書』
「薩長土肥四藩主連署し版籍奉還の表を上る、臣某等頓首再拝
謹て案ずるに、朝廷一日も失る可らざる者は大体なり。一日も仮す可らざる者は大権なり。天祖肇て国を開き基を建玉ひしより、皇統一系、万世無窮、普天率土、其の有に非ざるはなく、其臣に非ざるはなし。是れ大体とす。且つ与へ且つ奪ひ、爵禄以て下を維持し、尺土も私に有すること能はず、一民も私に□むこと能はず。是れ大権とす。方今大政新に復し、万機之を親らす、実に千歳の一機、其名あつて其実なかる可らす、其実を挙るは大義を明にし名分を正すより先なるはなし。嚮に徳川氏に起こる、古家旧族天下に半す、依て家を興すもの亦多し、而して其土地人民、之を朝廷に受ると否とを問はす、因襲の久しき以て今日に至る。世或は謂らく、是祖先鋒鏑の経始する所と、吁何そ兵を擁して官庫に入り、其貨を奪ひ、是死を犯して獲所のもの云に異ならんや、庫に入るものは人其賊たるを知る、土地人民を攘医奪するに至っては、天下これを怪します甚哉名義の紊攘する事。今也丕新の治を求む、宜しく大体の在る所、大権の繋る所、毫も仮すへからす。抑臣等居る所は、即ち天子の土、臣等牧する所は、即ち天子の民なり。安んそ私有すへけにや。今謹みて其版籍を収めて之を上る。願くは朝廷 其宜に処し、其与ふ可きは之を与へ、其奪ふべきはこれを奪ひ、凡列藩の封土、更に宜しく詔命を下し、これを改め定むへし。而して制度典型、軍旅の政より戎腹器機の制に至るまて、悉く朝廷より出て、天下の事、大小となく皆一に帰せしむへし。然后に名実相得、始めて海外各国と並立へし。故に臣某等不肖□劣を顧みす、敢えて鄙衷を献す。天日の明、幸に照臨を賜へ。臣某等誠恐誠惶、頓首再拝、以表。
 明治二年正月」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)